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地板の縁

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 今日は縁の処理(仕上げ)についてです。縁の処理方法については、さまざまな方法がありますが、ここでは代表的なものを紹介したいと思います

 最初の写真は、片流れと言う縁の処理で、表面から裏面にかけて、一方的に流れている縁処理についてで、写真右の縁がそれに当たるものです。これでしたら、作るのにも至って簡単で、単純に縁を削っていきますと、誰にでもこのように処理することができます

 この時、注意したいのは、その角度にあります。ただ斜めに縁を削るというだけでは、ちょっと物足りないだけでなく品も良くありません。これを品良く仕上げるのには2つほどコツがあり、1つめは、できるだけ長く斜面(削る箇所)を作る事にあります。このようにしますと、表面の平らな部分から、ゆったりと流してやると優しくなります。縁近くになってから削るのでは、いかにも取って付けたようにしかならず、優しさを出す事もできません。ですから、できるだけ長くゆったりと削るようにする事が最初の注意点になります

 では、どれくらい削れば良いのかと言う事になりますが、僕は概ね3分の1を目安にして削っています。つまり、左右3分の1ずつは削ってしまい、真ん中の3分の1だけが平らという感じです。もちろん、間口が広くなればなるほど削る部分の割合は狭くはなってきますが、20cmくらいの地板であれば、左右6~7cmは削るようにしています

 2点目のコツは、『表面の平らな部分と削る部分に境界を作らない』事です。ある位置から削っていく事になりますと、いくら角度が少ないからと言っても、必ずその境界がわかってしまいます。基本的に波形地板は優しい地板ですので、表面に境界線ができてしまいますと、やはり煩くなってしまい、上に載せる物が引き立つことがありません。ですから、境界を作らず自然にRを作っていく事が大事な事になります

 この『境界を作らない』ということは、他の地板にも共通して言えることですので、どのような地板を作る場合でも当てはまりますので、覚えておくと良いと思います。どうしても境界線を作りたいような場合は、できるだけ縁の近くに作るようにしますと、あまり目立ちませんし、品良く作りますと、これはこれで洒落た物になる場合もありますので、境界線を作る場合は、縁近くに作るようにします

 左の縁処理は、片蛤(かたはまぐり)です。片流れのような感じで作りながら、最後の縁の部分を少し丸めて蛤状にしたものです。片流れを少し柔らかくしたような感じの縁になり、片流れと蛤の中間的なタイプになります。作り方については、片流れに作りながら、そのまま下に降ろしてくるのではなく、最後の部分だけ裏面を少し削るように作ります。このようにしますと、板が薄く見えるようになります


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 2枚目の写真は、これを水平から見た写真です。片流れも片蛤も、実際は同じようなものでして、上から3枚目が片蛤、他の3枚が片流れという感じになっています。片流れと言っても、端まで削ってしますと尖ってしまいますので、端を多少丸めるようにしておきます


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 3枚目の写真は、いわゆる蛤端と呼ばれているもので、一番オーソドックスなものになります。蛤端とは文字通り蛤を横から見たような感じで、表面と裏面の縁を同じように削って端を少し丸めたものになります

 この手の特徴は、地板がほんの少し浮き気味に見えますので、品良く見えるのが最大の長所です。茶道具の長板や地板に使われている蛤端については、本当の蛤端になっていて、端の1cmくらいが削ってある(丸めてある)だけで、これでも大丈夫な場合もありますが、できれば、もう少し優しく作りたいところですので、少し長めに削っておくと品の良い縁になります


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 4枚目の写真は、その一例になります。写真ではわかりにくいかもしれませんが、かなり長めに削ってあります。こうしておきますと、植えにくさものなどを置いた場合は、優しくマッチしますし、品も良くなります


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 5枚目の写真は、板全体を薄く削って仕上げたものです。板全体をこれくらい薄く仕上げても、キチンと縁の処理はしてあります

 参考までに載せましたが、これくらい板を薄くしてしまいますと、どうしても反ってしまう可能性が高くなってしまいます。薄く作る場合は、反り防止のために油系の塗料で浸透性の高いものを使うのがコツです。板全体に油を染み込ませるようにしておきますと、簡単に反ってしまう事はなくなります


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 6枚目の写真は、木取りの一例です。玉杢材を使いますと、ほとんど狂う事はありませんが、普通の板材(柾目・板目)では、よほど乾燥させないと簡単に狂ってしまい、板が反ってしまう事がしばしばあります。上述したように浸透性の高い油系の塗料を使うのも一つの手ではありますが、それよりも大事なのは、板のどの部分を使うのかによります

 柾目材が良いように思えそうですが、柾目材は板目材よりも狂いやすいので、地板を作る場合は、板目材を使うのが合っているのではないかと思っています。そうして、板目の芯(木の芯)があるような部位を使いますと一番狂いが少ないので、可能であれば芯を使うようにすると良いと思います

 写真の2枚は、香りの良い屋久杉材で作ったものですが、写真で見てもわかるとおり、芯材を使っています。このように芯材を使っておけば、狂いにくい地板を作る事ができますので、材の選択時には、注意しておきますと良いと思います

 ちなみに、芯材の事を芯取りとも呼び、指物の中でも良い物は、全て芯取りされた板を使っています。お手元にある卓を見てもらえると、すぐにわかりますが、良い卓は天板が必ず芯取りをされた物を使っていますが、これは狂いをなくすために使われているもので、芯の部分が一番堅くて狂いにくいので、良い物には良い部材が使われているのです

 ですから、たかが地板かもしれませんが、可能であれば芯取りされた材で作りますと、狂うことは少なくなりますし、わかる人が見ますと、「むむむ・・・」と唸ってくれるかもしれません(笑)

 それと、もう一点注意したいのは、木取りをする場合に、良く言われるのが「木目を活かす」ということですが、これは単純に木目の良いところを使うというだけでなく、木目の流れと地板の流れを合わせることも注意したいところです。右の板は右勝手の流れの木目ですので、板の流れも右から左へ流すように木取りをし、左の板は左勝手の木目ですので、左から右へ流れる形の板に木取りがされています。これを、木目の流れと地板の流れが反対になってしまいますと、チグハグな物になってしまいますので、この点も、ちょっと注意したいところです

 ここまでくれば、ある程度基礎的な知識はおわかりになられたと思いますので、あとは実践ということになります。実践編については、実際に作る時にでも書くようにしますので、少しお待ち下さいませ

by haruka000s | 2007-12-27 22:17 | その他  

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