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シンパク彫刻

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シンパク・トショウ・イチイなどのような松柏類では、野生状態では枯れてしまった部分が白骨化してジンや舎利などと呼ばれていて、厳しい自然界のなかで生き抜いてきた様が大きな見所になっています

山取りですと、自然のジンや舎利を備えている物がありますが、そのような素材はだんだん少なくなり、挿し木などで増殖している素材でも、その厳しさを表現するために、人為的にジンや舎利を彫刻しているのはご承知のとおりです

シンパクはその代表格みたいな感じで、丸幹のシンパクなどは皆無と思われるくらいで、必ずや舎利付けがなされていると言って過言ではないくらいです。ですから、ジンや舎利作りというのは、松柏類を手がけている人にとっては、必須の技術となってきているようにも思えます

ジンも舎利も、ただ樹を削れば良いと言うわけではなく、自然さを持たせながら、美しさをも合わせ持たせなければならず、以外と難しいものです。もちろん、自然味があって美しければ良いというだけではなく、その樹と調和していなければならず、樹を活かしているジンや舎利というものが、優秀な彫刻と言えるでしょう

このように書きますと、それほど難しいようには思えないのですが、いざ彫刻しようとすると、意外と難しく、何回も削り直しながら、最終的に仕上げていく事になるのですが、その人のセンスが大きく問われる作業ではないかとも思えます。センスについては、文章で表現する事は不可能ですから、今回は、その作業の仕方について少し書いてみたいと思います。ただ、この方法は、僕独自の物でありますので、他の方がどのような方法でなされているのかはわからないので、この方法が最良とは限りませんので・・・・

僕のやり方は、まず枯れている部分を彫刻刀で粗彫りし、その後、ヤスリで細かい部分を削って舎利に動きを出し、最後に、細かなワイヤーブラシで仕上げるというものです。これを僕の場合は電動彫刻刀で行っています

最初の粗彫りについては、特に技術的な問題はなく、幹味に似合うという事と、舎利に変化と動きが出るように大胆に行う事が良いのではないかと考えています

次のヤスリでの細かい彫刻については、これも丸ヤスリを電動工具につけておこなうことになりますが、ここでは、「緩やかなうねり」や「細かな動き」に注意し、粗彫りした後の舎利を削っていきます。特に、ヤスリの大きさをこまめに替えながら、納得いくまで時間を掛けて削りますと、良い物ができるように思います

最後の仕上げについてですが、これはワイヤーブラシで表面を削るわけですが、大きな樹であれば手で持つブラシで削ることができますが、小さな樹では、上記の工程と同じように電動工具にワイヤーブラシをつけて削る事になります。ワイヤーブラシについては、普通に使うものであれば、大きすぎて細かな作業ができないので、精密模型を作成する時に使う細かなワイヤーブラシを使って、最後の仕上げを行っています

もちろん、いくら精密模型用とはいえ、すべての舎利部分を仕上げる事はできませんので、工具が届かない場所や、生き幹の近くなどは、サンドペーパーで擦る場合もあり、そのあたりは臨機応変といった感じでしょうか

ここで、一番注意したいのは、この最後の仕上げです。この工程で自然味が出せるかどうかが決まってくるからです。天然自然の舎利は、幹や枝が枯れてでき、その大きな特徴は、木目の堅い部分は残り、柔らかい部分は少し凹んでいるような感じになっていることで、いわゆる「うづくり」になっています。これは、木でできた古い板塀や雨戸なんかを見ても同じで、堅い部分だけが少し盛り上がるような形になっていますが、そのように仕上げますと、自然味が出る舎利やジンを作る事ができるのです

ですから、いわゆる『うづくり仕上げ』をすれば良い事になり、一番簡単なのは、木賊や紙ヤスリ(60~240番くらいの物)を使って、木目に沿って擦っていると、柔らかい部分だけが削れ、堅い部分だけが残る事になり、自然らしいジンや舎利になります。とは言え、持っている全ての樹に、このような作業を全て行っているわけではなく、よほど気に入った樹でない限り、最後の仕上げまでは行っていず、ほとんどの樹は丸ヤスリで擦って終わりです(笑)


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この写真は、作業中のもので、丸ヤスリで擦っているところです。このように電動工具を使う場合もあれば、ジン削り用のカマみたいな彫刻刀を使う場合もあります。一部のプロの方は、サンドブラスターを使って彫刻しています。このサンドブラスターを使いますと、簡単に好きなように削れますので、欲しいのですが、高価ですし置く場所もありませんので、あきらめています(笑)

by haruka000s | 2007-10-21 00:04 | 木作り  

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