犠牲枝

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今日は、犠牲枝について、少し書いてみます
犠牲枝には3つの役割があり、1つ目の役割は、なんと言っても幹を太らせる役割です。幹を太らせるのにも、細かく言いますと2つの方法があり、1つ目は幹芯を立て替える場合で、幹が望みの太さになったり、望みの長さになり、これから小枝を作っていく場合などに行う方法です
上の写真は、僕には珍しく、黒松の小品盆栽を作っている樹です。望んでいる太さと大きさになりましたので、これから枝作りに入るところで、青線の左側で樹芯を切りとばしたところです。昨年は、赤い線で書いたように芽が伸びていたのですが、この大きさで作ってしまいますと、望んでいる姿よりも大きくなってしまいますので、樹芯を作夏くらいに切りとばして、今春から小枝を作っていく事になります
ここで注目してもらいたいのは、青線で囲まれている部分で、ここは肌の色が少し変わっているのがわかりますが、これが昨年伸びた部分で、ここを少しだけ残してやることで、コケ順ができて、根元から順に太くなっていくという自然の風味が出てくるのです。青線の右側で幹を切ってしまった場合は、太い幹からいきなり小枝が出てくる姿になってしまい、自然の風味が失われてしまい、鑑賞価値も下がってしまいますので、たとえ数cmでもこのような部分を作ってやることにより、自然風の姿ができてきます
ですから、この場合は、昨夏に切りとばした樹芯部分(赤い線で書いた部分:芽)が、犠牲枝ということになります
また、赤の矢印で示した箇所が2箇所ありますが、これは、幹を太らせるための犠牲枝の切除跡です。右側の長い矢印の部分は昨夏に切除し、左側の矢印の部分は今春に切除した跡になっています
この2本の犠牲枝については、幹を太らせるための役割を持った犠牲枝でして、枝をたくさん付けておきますと、水分を揚げる力が強くなり、水揚げが活発になることにより幹が太ってきますので、そのためにつけておいた枝ですが、望みの太さになりましたので、切除しました。もちろん、もっと太らせたい場合は、もう少し枝数をつけておいて、あと数年残しておけば、さらに樹を太らせる事は簡単にできます
この樹は、細幹で風情のあるミニ盆栽を目指していますので、幹の太さも、こんなもので十分と思って、小枝作りに入る事になりました。それでも、一番先端の強い1芽だけは、今年も伸ばしっぱなしにするつもりで、これも犠牲枝になり、今夏か来春にでも切除することになると思います。なぜ1芽だけ伸ばすかと言いますと、この犠牲枝の役割は、赤い矢印で切除した枝の傷口を少しでも巻かせるための役割のために伸ばす予定となっているからです
強い芽を伸ばしますと、樹全体の成長も良くなり、傷口が癒えるのも早くなるからです。このように、傷口を巻かせるために犠牲枝を伸ばす場合もありますので、覚えておきますと、何かの役に立つと思いますので、覚えておいても良いかもです

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2枚目の写真は、文人風に作ろうかと思っている赤松で、山実生から作っていて7~8年生といったところでしょうか。写真を撮った時は、恐らく4月の上旬くらいでしたが、すでに旺盛な新芽の伸びを示していて、そろそろ骨格を作ろうかなと思っているところです
樹作りの一環として、ちょっと注目してもらいたいのは、松類特有の車枝です。写真でもわかるとおり、この樹に車枝の部分は1箇所もないことがわかると思います。一旦車枝を作って枝を伸ばしてしまいますと、細幹の樹では修正が効かないくらいカッコ悪くなってしまいますので、僕は、冬の間中に車枝にならないよう芽を掻いてしまう作業を行っていますので、このような新芽の状態になっているのです

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樹高はこれくらいで作ろうかと思っていますので、この樹も、今年から少しずつ樹作りにはいる予定で、4月の上旬に最初の作業を行ったところです。赤い矢印が示してある場所が4箇所ありますが、ここが犠牲枝を抜いた跡で、本当は見えないところにもいくつかあるのですが、矢印部分は写真からでもわかると思います。これは幹を太らせるための犠牲枝の抜き跡になっています
ここで上の写真と見比べてもらいますと、初の作業内容がわかると思いますが、まず最初に気がつくのが「ほとんどの新芽が掻いてある」事です。この作業は【緑摘み】と言って、新芽を短く留めるための作業で、この作業を行うことで節間の詰まった枝を作ることができますし、胴吹き芽が出てくることも期待できますので、これから枝に使おうと思っている枝の新芽は、すべて芽を掻いてあります
よく見ていただきますと、一番下の枝だけは芽が掻いてないのがわかると思いますが、この枝も実は犠牲枝になっているからです。下から2番目の枝については、今後使うかどうか決めかねている状態でしたので、とりあえず、芽は掻いてありますが、節間が長いので、この枝も犠牲枝になりそうです
問題なのは、なぜこの2本を犠牲枝として残しておいたのか?・・・です
犠牲枝の役割は、幹を太らせる事ともに、【樹勢を強く保つ】という役割もあります。この樹の場合は、犠牲枝を残しておくことにより、今年1年間樹に勢いをつけておいて、来春に切除する予定です。犠牲枝に勢いをつけておいてから切除しますと、胴吹き芽が期待できるからです。この樹は、上部の3分の1くらいで作る予定となっていますが、見てのとおり上部に小枝や芽がほとんどありません。そのため、犠牲枝で樹勢を強くしておき、切除することにって胴吹き芽を出させて枝にしていくのです。これは樹勢がのっていないと芽吹きが期待できませんので、そのために枝を残しておくのです
来春に切除して、思ったように胴吹きしない場合は、夏に芽切りを行い、無理矢理にでも芽を作っていきます。そうしませんと、なかなか盆栽になってくれません(笑)

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4枚目の写真も、基本的には3枚目と同じ作り方ですね。この樹は赤い点線で囲んだ部分だけで作ろうと考えている樹で、この樹は、まだまだ上部が細いので、もう少し太りを得ないとなりませんので、矢印のような犠牲枝が残してあります
幹の太りが出ましても、上部はまだまだ全体に見合った太さにはならないはずですから、最初の黒松と同じように、最後は一番先端の芽を走らせて、幹最先端部の太りを作ってから小枝作りの作業になる予定です。ですから、このままの状態で、何の作業せず、あと2年くらいは、ほったらかしにしておき樹勢をつけるようにしておきます
不要と思う枝でも、簡単に切除する必要は無いと言うのは、この【樹に樹勢をつける】という役割があるからで、枝をつけておくことにより根の生育も良くなるからなのです。思った太さになるまで・・・、思った樹高になるまで・・・、あるいは、植え替え時においても、根を作り樹勢を強くするまでは、不要な枝と思っても簡単に切除しない方が良いとは、このためなのです

整理し直しますと
1・幹を太らせる
2・傷口を塞ぐ
3・樹勢をつける
という働きが犠牲枝にはありますので、これを上手に利用していけば、自分の考えている姿に、少しでも効率よく近づけることができますので、素材段階の樹では、むやみに剪定ばかりしない事をお勧めします
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by haruka000s | 2007-05-30 22:20 | 肥培管理  

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