一弘水盤
水盤も水石と同様に、新しくテカッたものですと石の雰囲気に合わないものが多いので、可能であれば古い水盤を使いたいですし、新しい水盤の場合は、味をつけてから使用するようにしています
水盤の味付けのために、棚の上に水盤を並べ、その上に水石を置いて潅水する方法が昔から盛んに行われていましたが、そこまでの場所が無いのが現在の住宅事情でしょう
我が家も、それはまったく同じで、水盤に味付けをするために干す場所がありませんので、物置や車庫の屋根の上に干すようにしています
磁器の水盤なら、冬季に凍って壊れる事はないのですが、柔らかな陶器の水盤ですと、簡単に割れてしまったり、釉薬の部分だけが剥離してしまったります。そこで、冬季は水盤内が凍らないようにすることと、水盤の裏面に味をつけるため、裏面を陽に当てるようにします。まだ凍るほどの寒さではありませんが、覚えているうちに作業をしておこうと思い、干してあった水盤を裏返しておいたのです
その作業をしていましたら、ふと一弘さんの水盤が目にとまりました
一弘さんとは、盆栽鉢作家の渡辺一弘さんのことで、国内の現役鉢作家さんでは、なかなか人気のある方で良い鉢をたくさん作っていますが、水盤については流通量(生産量)が少ないからか、水石界においては、それほど人気が無いというか、知られていない存在です
しかし、釉薬も良いものがあって、時代乗りが良かったりしますし、造形も狂いが少なくカチッとした仕上がりですので、僕自身はそこそこ評価をしている作家さんで、気に入ったものがあれば購入していました
一弘さんはブログもやっていまして、ある時、自分が使っている落款の一覧表を出していたのを、ふと思い出し、僕が持っている水盤はいつ頃作られたものなのか、少し調べてみました。どうでも良いといえばどうでも良い事なのですが、作行きに変化でもあるかなと思ってのことです
当初、僕が持っている水盤は4枚だけだと思っていたのですが、よくよく調べてみましたら次のとおり8枚もありました(笑)
最初は呂均釉の外縁楕円水盤です
2枚目は、白釉外縁隅入り長方水盤です
3枚目は、薄均釉長方水盤です
4枚目は、蕎麦釉撫で角長方水盤です
5枚目は、薄均釉隅入り長方水盤です
6枚目は、瑠璃釉長方水盤です
7枚目は、緑釉長方水盤です
8枚目は、瑠璃釉楕円水盤です
もともと支那鉢に傾倒しているような方ですので、僕の手元にあるものも、釉薬も形状も支那水盤を志向したようなオーソドックスなものです
こちらが落款部分です
やや薄茶の陶土をしているようで、8枚とも同じ用土を使って作られている感じです
制作年代については、落款集から見ますと昭和56年くらいから現代にまで至る感じですが、近年のもののほうがやや浅手かなというくらいで、作行きの変化など感じる事はできませんでした
この落款集を見ていて、ちょっと気になったのが、7枚目の緑釉の長方水盤で、焼成温度が高いせいなのか、釉薬はかなり激しく溶けて流れているような感じで、水盤の内底に厚く釉が溜まっているものです
落款を見ますと < 07 > と写真の右上に書いてあるもので、これは落款集では 『 S58~ 中品・大品鉢 型押し 』 と書いてあるもので、水盤とは書いてありません
この水盤は、30cm程度のものですので、分類からすれば中品に分類されるでしょうが、もちろん鉢ではなく水盤です。となると、型押しの水盤ということになるのか? それとも、この落款集に「水盤」と書くのを忘れたのか? もしくは、間違えて落款を押してしまったのか?
この文章を書いている時に、この水盤は車庫の屋根にありますので、確認する事はできませんが、少なくとも型押しの水盤ではなかったような気がしています
となれば、落款集の間違いか、落款の押し間違えかになるのですが、どうなんでしょうかねぇ・・・・・
by haruka000s | 2011-10-21 00:02 | 水石