水吸い作成

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真柏を始めとする松柏類は、ジンや舎利を持つものも多く、特に真柏・トショウ・イチイなどは丸幹のほうが珍しく、ほとんどの盆栽にはジンや舎利が施されていて、水吸いと舎利の対比を鑑賞するようにもなっています。特に真柏は、白っぽいジン・茶色の水吸い・緑の葉とのコントラストが素晴らしく、丸幹のものは無価値に等しいくらいの感じですね

今回は、このような木の水吸いの作り方(あり方)について、少し書いてみたいと思います。山取り真柏の古木などを見ていますと、時代感のある舎利と水吸いのコントラストは最大の魅力となっていて、枝棚などできていなくても、それだけで充分鑑賞価値があるくらいです

ところが、そのような山取り素材は数も少なく希少なため、近年は挿し木素材が中心に作られていますので、挿し木から水吸いを作っていく(舎利を作るのと同じですね)事について触れてみたいと思います

何でもかんでも舎利にして水吸いを作れば良いというわけではなく、良い水吸いを作るのには、ある程度の法則みたいなものがありますので、これを理解していけば鑑賞価値の高い良い水吸いを作る事ができるようになると思います。どのような水吸いを作れば良いのか、僕なりに注意している事が2点だけ有り、その事について少し触れてみることにします

最初に注意したいのは水吸いを付ける位置です。天然の木が舎利になるという場合は、落石・風雪や落雷による枝や幹折れ・乾燥による根枯れなどですが、一番多いのは前記2者の要因で落石や風雪による幹折れや枝折れによるものだろうと思います。つまり、懸崖や半懸崖であれば上の部分が枯れて舎利になるはずで、左右に勝手のある模様木や斜幹樹などは、勝手側に舎利のあるものが自然樹形ということになります。懸崖樹などは、幹の上部に落石を受けてその部分が枯れて舎利になるわけですから、懸崖樹でありながら上部に水吸いが残っているのは不自然な樹形になってしまいます

盆栽というのは、自然樹が基本にありますから、可能な限り水吸いの位置には気を付けたいところです。もちろん改作や樹作りをしていく過程で、どうしてもそこに水吸いを作らなければならない場合もでてきますが、知らずに適当にやっているのと、知っていても仕方がなくやっているのでは大違いですので、可能な限り「水吸いは流れ側に作る」という事だけでも覚えておくと良いと思います

次に注意しているのは、水吸いが舎利を横切らないようにしている事です。文字だけではわかりにくいと思いますが、舎利というのは元々が生きていた幹であるから当然年輪もあり、皮を剥いていきますと成長した痕跡が縦に筋状になっています。この舎利の線を水吸いが横切らないように作るという事です

自然状態では、枝が枯損などして枯れた場合は、それに続く生き幹(水吸い)が枯れますから、舎利の線と同じように水吸いが残るようになります。ところが、針金の結束や舎利の線などを無視して適当に舎利を作ってしまいますと、舎利の線を横切るように水吸いを作ってしまう場合があります。このように水吸いを作ってしまいますと、最初のうちはこれでも満足できますが、樹がわかってくるとこのような樹は不自然ですから必ず飽きてしまう事になります(もちろん、飽きない人もいますが・笑)。特に、樹は生きていますから、年数が経てば経つほど不自然さが増してきてしまいます。ですから、舎利に沿った水吸いを作っておくと、自然さを残しながら維持管理していく事ができて飽きる事はないので、自然さを残すような水吸いを作ることに注意をしています

そのために、挿し木した苗に曲を付ける場合も、ただ曲げるだけではなく、幹を捩りながら曲を入れるようにしますと、表皮を剥くだけで水吸いは自然と捻転して、水吸いと舎利のバランスが自然っぽくなるからです

もちろん、盆栽といのは自然が作るものではなく、あくまでも人間が人工的に作り出すものですので、少々の不自然さが合ってもそれをカバーすることができる美を感じる事ができさえすれば、それはそれで問題はないと考えています。美しさを出すために水吸いを勝手側に作らなければならない場合もありますので、この2点は絶対条件ではないとも考えていますが、可能な限り守っていた方が確実に良い樹になるだろうとは思っています。そのため、できるだけこの2点は守るように樹作りを進めていますが、美を表現するために逆らう場合もあり、要は臨機応変に対応するようにしています

今回の素材はこの真柏です。これは作秋埼玉に行った時に購入したもので、丸幹で葉がボウボウとしていた状態のものでした。この樹に対してどのように水吸いを作っていくのかで、この素材を活かすことができるかどうかが分かれてきます


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2枚目の写真は、裏から撮影したものです。全体の姿は簡単に見えてくるのですが、難しいのは水吸いの順路になってきます。自然さをできるだけ残しながらも素材を引き立たせるようにしなければなりません。そこで、黒マジック(赤い線)で示したように水吸いを作る計画にしました

そこで最初に行った作業は、幹筋の確認でして、冬場に5mmほど皮を削って最上部まで、それを繋げるという作業です。とりあえず、このようにしておいて春まで様子をみていました

皮を削ると言っても、適当に削るわけではなく、一旦幹の最下部から皮を筋に従ってラジペンなどで剥いていく作業でしたので、水吸いが横切るような作業ではありませんから、絶対に枯れるようなものではありません

ここまでの作業は、3月に済ませてありました


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春先になり、赤茶けいていた葉が緑になってきましたので、荒切りをして使える枝の選別を行い、不要な枝は切除し必要な枝に養分が行くようにしてあります。現状では上部にある2本(15cm程度)の小枝しか使えそうになく、時間がかかりそうな感じですが、こればっかりは仕方がありません(笑)


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そして、まだ水吸いを少し削ったのがこの写真になります。写真で見てもわかると思いますが、とりあえず舎利の線を水吸いが横切ることなく一体となった水吸いにしてあります。もちろん、こんな太さでは使えませんので、これから少しずつ削っていき細くしていく事になりますが。一度に作業することなく、上部葉の繁茂状況を見ながら削っていくようになり、夏になったらもう少し削るようにする予定で、今春はこれくらいでしょうか

これくらいに削っておきますと、一旦芽止まりのする夏場までは積極的に水を揚げますので、水吸いもしっかりしてきますので、そうなったら2回目の削り込みをするようにします。削ると言っても皮を剥ぐだけで、舎利を彫刻するような事はせず、最初は水吸いを作るという事に最大限の努力を払い、水吸いがある程度決まってから、それに合わせて舎利の彫刻を行うようにします。そうしますと、水吸いと調和の取れた舎利を作る事ができます

今回の作業で注意したのは最下部の処理です。とりあえず水吸いを正面の左右から2本揚げて、矢印の地点から1本にしてあります。自然さを追求するのなら、右からの水吸いを活かしたいところなのですが、ここから1本の水吸いが樹を登っていく事になりますと、非常にバランスが悪くなってしまいますので、順当なら左から伸びてくる水吸いだけで作るようになりますが、根の状態がわからないので、今のうちは左右両方を残すようにしておき、植え替え時根処理と同時に右の水吸いを削るようにする予定となっています

赤い矢印の枝が将来使う枝で、最終的には、この枝1本から作ろうかと考えている枝です。幹を少し左に傾ければ幹の動きも良くなり、まあまあの木になるのではと思っています


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上部で注意したいのは、水吸いを作ってある場所です。今回は、意識して板幹状になる場所へ水吸いを作ってあります。細幹である程度長い曲のものならば、曲の内側に水吸いを作ってもそれほど違和感を感じる事はありませんが、この木は座の部分がかなりガッシリしていますので、上部を細くしてしまうとバランスが崩れてしまいますので、そのあたりを考慮して曲の外側に水吸いを作り、下部とのバランスを取れるようにしたり、全体が調和されるような位置にしてあります

とりあえずはこのまま肥培し、水吸いがしっかりしてくるようでしたら、今夏にも水吸いをさらに細める予定ですが、どうなるでしょうか(笑)
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by haruka000s | 2008-05-29 23:38 | 木作り  

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