先人の思い出

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盆栽や水石の世界には、若い人が入らず高齢化が進んでいますが、これは盆栽や水石だけにかかわらず、あらゆる伝統芸能分野でもまったく同じことで、少子化と多様化する価値観や、新しい文化・文明が誕生していく現在では、仕方がないことでしょう

これから、どのような方向性に進むべきなのかということはともかくとして、若い人はほとんど入ってこず、先人達は少しずつ亡くなっていき、なかには会の存続すらできないところもでてきているようです

本県でも、つい先日 伊藤嵐さんが薬石の効無く亡くなってしまいました行年91歳ですから、年齢も高齢なのでやむを得ない状況で、病気というよりも老衰が原因ですから大往生と言って良いでしょう

伊藤嵐さんの『嵐』は雅号で、本名は利次さんです。最初の頃は小品盆栽を楽しんでいましたが、そのうち水石の道にも踏み入り、水石・盆栽・山野草などを総合的に楽しんでいただけでなく、県内においては、山梨県愛石会会長・景水会会長・甲府市文化協会水石部部長などの役職を長く務め、後進の指導にあたってきただけでなく、片山一雨先生が主導する景道においては、修行を積んで師範となり、全国的にも知られた存在です

飾りが好きで、水石飾りだけでなく盆栽飾りや山野草飾りなど、多種多様な飾りを行い、大観展においては10年くらい連続で大観展を受賞しているほどで、日本屈指の飾り名人として良く知られている人です

その飾りは、一雨会の展示会の本や資料、愛石の友、近代盆栽や盆栽世界でも幅広く紹介されていますので、本人を直接知らない方でも、その名前くらいは知っている方が多いことと思います。特に、一雨会の展示会では、いわゆる一般的な床飾りではなく、普段誰もしたことのない路地や待合での飾りを行うなど、飾りのセンスの良さは他の追随を許さない程の力量で、一雨会の中でも突出した存在でした

飾りの分野では、草体の飾りが好きであるとともに得意でした。草体の飾りというものは一番難しく、真体・行体飾りを会得した人が挑戦するような飾りであり、草体の飾りまで会得したような人は伊藤さん以外には、ほとんどいないのではないでしょうか・・・すべてのものを削ぎ落としたものを利用し、あるいは組み合わせて、品格・格調高く飾るということは、文章で書くといとも簡単ではありますが、その飾りを持って飾り達者な人を唸らせるのは難しいことで、なかなか真似のできることではありません

ですから、大観展においても飾りの部で優秀な人に送られる『大観展賞』でも、詳しくは覚えていませんが10数年連続で受賞しているはずで、一雨会が盛りの頃でも、これほど受賞した人は伊藤さんしかいないのではないでしょうか

初七日の法要では、喪主である息子さんから、  「うちの父は、何事にも美しく・形良くということを言っていましたので、そのことを心がけてこれから生きていきたい」 と挨拶をしていました

伊藤さんの心構えや飾りは、まさしくその言葉どおりでした。想い出は、書き出せばきりがないほどたくさんありますので、とてもここでは書ききれません

ただただ、安らかに眠っていただけるよう心より願っております



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この写真は、昨秋に行われた甲府市文化協会の水石展における伊藤さん最後の飾りです

ツルんとした川擦れの良い山形石を、好きだった志茄埜庵の水盤に据えて、片山さん由来の机卓と取り合わせています
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by haruka000s | 2011-11-14 00:22 | 水石  

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